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和歌山家庭裁判所 昭和46年(少)196号 決定 1971年10月08日

少年 N・O子(昭二八・九・二一生)

主文

この事件について、少年を保護処分に付さない。

理由

第一送致事実の要旨

少年は、昭和四四年三月末ごろから海南市○○×××番地○○理髪店で住込み技術見習中であつたが、根気性に乏しく、昭和四四年一二月ごろ、昭和四六年二月二日、同月一〇日すぎと同年三月一一日の四回にわたり、雇主である保護者S・Sの監督に服さず家出したものであるが、前記家出中の昭和四六年二月二日午後九時ごろ、同市○○○○電車前の信号機付近で、面識のないA(一九歳)の運転する普通乗用車に同乗し○○方面に走行中、和歌山県西牟婁郡○○○町付近のモーテルで前記Aと不純な性交遊をしたもので、将来罪を犯す虞れがある。

第二当裁判所の判断

(1)  A、Bの各司法警察員に対する供述調書の謄本、少年の司法警察員に対する供述調書(二通)と当審判廷における少年および保護者N・Iの各陳述を総合すると次の事実が認められる。

少年は、昭和四四年三月末から和歌山県海南市○○にある○○理髪店に住込みで勤め、理容技術の見習をしていたが、理容の仕事に嫌気がさして同年一二月ごろ同店を無断でとび出した(一日外泊したのち帰宅)。その後、昭和四六年二月二日に雇主から帰宅がおそかつたことを理由にきつくしかられて立腹し、仕事への不満と嫌悪から再び同店を逃げ出した。そして、同日午後九時ごろ、前同市○○の○○電車前の信号機付近を通行中、面識のないA(当時一九歳)から「送つてやろう。」などと声をかけられ、同人の運転する普通乗用自動車に同乗し、ドライブしたうえ同県西牟婁郡○○○町付近のモーテルに入りAと肉体関係を結んだ。次いで、同月一〇日すぎの午後九時ごろ、前記○○理髪店で、雇主と少年の父が少年の退職のことで談話中、再び逃げ出して帰宅しなかつた。さらに、同年三月一一日ごろ姉との口論や父からしかられたことおよび理髪の仕事を続けることに嫌気がさして、再度自宅をとび出した。そのほか、少年は中学二年生のころ自宅を逃げ出して帰宅しなかつたことが一度あり、また、昭和四五年一一月ごろ友人のC(当時一八歳くらい)と肉体関係を結んだことがある。

以上の事実が認められる。これらの事実によれば、少年は保護者の正当な監督に服しない性癖があり、自己の徳性を害する行為をする性癖があると一応認めざるをえない。

(2)  しかし、少年が将来罪を犯す虞があると認めるにたりる資料はない。

少年は、中学校在学中はまじめで良好な生徒であつたし、○○理髪店に在職中も夜遊びやいわゆるボンド遊び等の不良行為をすることもなかつた。これまでに犯罪行為をしたことはないし、その友人に犯罪的傾向をもつた者もない。少年はおとなしい性格であり、その反面いくぶん主体性としんぼう強さに欠ける点があるが、他に特に問題になるような性格の持主でもない。家庭内にも問題点は見出せない。

そして、前記(1)で認定した家出ないし職場からの逃避のうち、中学生時代の家出を除きその他はいずれも主として理容の仕事を嫌つたための行為であるし、保護者の監督を離れていた際にも罪を犯しもしくは犯そうとしたことがあつたと認めるだけの資料もない。また、前記認定のような異性との肉体的交渉も、その当否はともかくとして、現在の社会における青少年の性意識の状況からすると、この少年の場合ただちに犯罪行為に発展する蓋然性を有していると認めることも妥当ではない。

第三むすび

そうすると、少年の性格および環境に照して、少年が将来罪を犯す虞があると認めるにたりる資料のない本件においては、少年を保護処分に付することができないというべきである(本件少年については児童福祉法上の措置に委ねるべきであつたと考えられる。ただし、現在少年はすでに一八歳に達しているし、自宅で姉の営む理髪店の手伝をし、理髪に興味を覚えるようになつておちつきをみせているだけでなく、これまでの自己の行為に対する反省とともに、異性との交遊についての考え方もかなり健全化されており父母の指導監督と相まつて要保護性も薄らいでいると認められる。)。

そこで、少年法第二三条二項にしたがい、主文のとおり決定する。

(裁判官 喜久本朝正)

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